幸せになるために
そして実は「一生傍に居る」宣言をしたあの日以降、お互いの部屋を行き来するだけじゃなく、ちょこちょこ一緒にお出かけもするようになっていた。

食料の買い出しの為、コンビニやスーパーへと赴く所から始まって、カラオケ、映画館、美術館と、だんだん行動範囲が広がって来ている。

ゆくゆくはどこか旅行にでも行こうか、という話にもなっていた。

ただ、個人的には、お出かけももちろん楽しいんだけど、お互いの部屋で、二人っきりで過ごす時間も捨てがたかったりするんだよね…。

その頻度も前よりかなり高くなっていて、週に3回は夕食を共にしている。

というのも、以前、きっかけは何だったのか忘れたけれど、健康を維持する為にはやはりなるべく手作りの料理を摂取するのに越した事はなく、その為にはもっとレパートリーを増やしていかないと、という話になった。

その際に『一人だとくじけそうだから、一緒に勉強しないか?』『材料費も折半にすれば経済的じゃないか!』という流れになり、定期的に男二人の料理教室が開催される運びとなったのだった。

さすがに毎日だとお互いタイミングを合わせるのが難しいし、何より料理を作る事自体に飽きてしまいそうなので、とりあえず週3くらいにしておこう、とまず取り決めをした。

料理本に書いてある分量は4人前の事が多く、余った分を冷凍しておけば他の日に回せるもんね。

それに、そこまで手の込んだ物は作れないけど元々自炊はしてたんだし、そこに週3回の料理教室を(半ば強制的に)加えれば、レトルトやインスタントに頼る食生活はだいぶ改善されるハズ。

さらに『曜日は固定じゃなくて週の始めに都合が良い日を申告しあってその都度適当に』『場所の提供は交互にする』『材料の仕入れは二人で行ける時はもちろん二人で、無理な場合は手が空いてる方が担当する。料金は後で精算』と、どんどんルールが決まって行った。

そして今回は、吾妻さんが材料の買い出しと、キッチンの提供をしてくれる事となったのだった。

勤務が終わったオレが吾妻さん宅にお邪魔して、調理実習になだれ込むという訳だ。

ちなみに肝心の、料理の教科書となるレシピ本の調達は言わずもがなでオレの仕事である。
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