幸せになるために
「引っ越しの時、洋服は全部持って来たつもりだったんだけど、よくよく考えたらあの頃ちょうど、礼服はクリーニングに出してたんだよね。といってもお店に持って行ってくれたのは母さんだけど」
「ああ、俺の結婚式で着たもんな」
スープを啜りつつ、兄ちゃんは答えた。
「で、クリーニング店から引き上げた後、多分母さん納戸の洋服ダンスに入れてくれたと思うんだ。そんなに頻繁に着る物じゃないし、別に急いで渡さなくても良いだろうって事で」
「なるほどな」
再びハンバーグ、次いでライスを口に入れてモグモグしていた兄ちゃんは、頷きながらそう言ったあと、一拍置いて続けた。
「でも、同僚の結婚式であの黒の上下って畏まり過ぎじゃねーの?まだ若いんだしもうちょっと略礼装で良いと思うけど」
「んー。でも、何か話によると、新郎の勤め先がお堅い所らしくて、すっごく品格のある式になりそうなんだよ。それにオレ一応上司で職場の代表としてお招きされてる訳だからさ、やっぱそれなりの服装じゃないと失礼かなと」
「そっか」
兄ちゃんはあっさりと納得した。
「んじゃ、帰ったら探しといてやるよ。そんで結果はメールで知らせるから」
「わ、ホント?助かる~」
「今度の金曜日に取りに来るのか?」
「そうだね。結婚式までまだ大分日にちがあるけど、思い付いた時に取りに行っちゃった方が良いよね」
「一応試着もしとかないとな。ああいう服って、ちょっとでも太ったり痩せたりすると、途端に動きに支障が出るから。直前になって『サイズが合わない!』なんて事になったらてんやわんやするもんな」
「だよね。式までに、余裕を持って色々準備しとかないと。そんな訳なんで、兄ちゃんよろしくね」
「おう。まかしとけ」
その力強い声音にオレは心底ホッとして、スープに口を付けたあと、残りのオムライスを食するのに専念し出した。
兄ちゃんもそれにつられたように、ナイフとフォークを操って黙々と目の前の料理を口に運ぶ。
しばしの間その空間には、カトラリーと食器が触れあう音だけが響いていた。
「……で?」
「ああ、俺の結婚式で着たもんな」
スープを啜りつつ、兄ちゃんは答えた。
「で、クリーニング店から引き上げた後、多分母さん納戸の洋服ダンスに入れてくれたと思うんだ。そんなに頻繁に着る物じゃないし、別に急いで渡さなくても良いだろうって事で」
「なるほどな」
再びハンバーグ、次いでライスを口に入れてモグモグしていた兄ちゃんは、頷きながらそう言ったあと、一拍置いて続けた。
「でも、同僚の結婚式であの黒の上下って畏まり過ぎじゃねーの?まだ若いんだしもうちょっと略礼装で良いと思うけど」
「んー。でも、何か話によると、新郎の勤め先がお堅い所らしくて、すっごく品格のある式になりそうなんだよ。それにオレ一応上司で職場の代表としてお招きされてる訳だからさ、やっぱそれなりの服装じゃないと失礼かなと」
「そっか」
兄ちゃんはあっさりと納得した。
「んじゃ、帰ったら探しといてやるよ。そんで結果はメールで知らせるから」
「わ、ホント?助かる~」
「今度の金曜日に取りに来るのか?」
「そうだね。結婚式までまだ大分日にちがあるけど、思い付いた時に取りに行っちゃった方が良いよね」
「一応試着もしとかないとな。ああいう服って、ちょっとでも太ったり痩せたりすると、途端に動きに支障が出るから。直前になって『サイズが合わない!』なんて事になったらてんやわんやするもんな」
「だよね。式までに、余裕を持って色々準備しとかないと。そんな訳なんで、兄ちゃんよろしくね」
「おう。まかしとけ」
その力強い声音にオレは心底ホッとして、スープに口を付けたあと、残りのオムライスを食するのに専念し出した。
兄ちゃんもそれにつられたように、ナイフとフォークを操って黙々と目の前の料理を口に運ぶ。
しばしの間その空間には、カトラリーと食器が触れあう音だけが響いていた。
「……で?」