幸せになるために
まずは洋食の定番、ハンバーグと、キノコと根菜の温野菜サラダ、コンソメスープというメニューに挑戦してみるつもりだった。

ソースやドレッシングももちろん手作り。

まぁ、スープの素は市販の物に頼る事になるけど。

ハンバーグは中学の時の調理実習で作ったことはあるんだけど、ほぼ同じグループの女子に任せてオレら男子は食器運搬とか洗い物係にまわっちゃってたから…。

作り方なんか全然覚えてやしない。

その時だけに限らず、調理実習ではずっとそんな感じだった。

ていうか、学校の授業だけで一人暮らしに困らないくらいの料理スキルを身に付けるってのは、ちょっと無理難題だよな。

真剣に授業を受けて、その覚えた料理を家で繰り返し作るようにすれば、手順を忘れる事はないだろうしどんどん得意料理が増えて行って、その技術を応用してさらに色んな物が作れるようになって行くだろうけど。

男子が家で台所の手伝いを命じられるって事は普通はあまりない事だし、授業さえ乗り切ったらそこで終わりだもん。

だからほとんど何も身に付かないまま大きくなり、いざ一人暮らしするって時に焦る事になる。

まぁ今の子達は「男女平等」ってのを徹底的に教え込まれるらしいから、これからどうなって行くかは分からないけど、少なくともオレの周りの同年代の男子は皆そうだ。

だから今日の挑戦はあの時のリベンジであり、オレにとっては次なるステージへの大きな第一歩という事になる。

無事にやり切れるかどうか、ちょいとドキドキ。

とにもかくにも、さっそく行動を開始する事にした。

まずは洗面所へ行き、うがいや洗顔をしたあと、濡らした布巾を手にリビングまで移動し、ベランダに出て手すりや物干し竿を丁寧に拭く。

その後寝室に戻り、シーツや掛け布団、枕のカバーを外して洗面所まで持って行き、ざっと水洗いして汚れを落とした布巾と、後でまとめて洗うつもりでランドリーラックのカゴの中に入れておいた服数着と共に洗濯機にIN。

スイッチを押したあと、再び寝室に戻り、掛け敷き布団両方を抱えてリビングの窓辺まで移動する。

一旦床の上に置き、ベランダに出てからそれらを順に抱え上げ、手すりに並べて干した。

それから今度はキッチンまで歩を進め、冷蔵室から味噌汁の入った耐熱容器、冷凍室から作り置きしておいた焼き鮭とご飯を取り出してそれぞれレンジで温め直す。
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