幸せになるために
オレは思わずドキリとした。
「私から告白しておいてゴメンね?でも、比企君といるとリラックスし過ぎて、男として見られない事に気付いちゃったんだよね」
彼女に振られた時に、言われた言葉。
『そんでいつの間にやら別れちまってて、その後さっぱり浮いた話を聞かないからさー。一体これからどうするつもりなんだろうと思って』
「自分が新婚ラブラブ期だからって、そのノリを周りに押し付けるのはやめろよな」
オレはちょっと強い口調でたしなめた。
「家族にならまだしも、他の人にもそういう態度を取ってたら、嫌われちゃうからね」
『あ、わ、わりぃ』
基本平和主義者で誰かを怒らせたり傷付けたりするのが苦手な兄ちゃんは、慌てて謝罪した。
「…とにかく、ちょっと調べたい事とかあるから、明日に限らず、しばらくは実家に顔出せないと思う」
『……そっか』
「そういう訳だから、皆によろしく言っといて」
『分かった。それじゃ、また今度な』
「うん」
『ホントゴメンな?たすく』
最後にもう一度詫びを入れてから、兄ちゃんは電話を切った。
……ちょっと言い過ぎちゃったかな。
ケータイをポッケに戻しつつ考える。
今のは八つ当たりも入っちゃってたんだよな。
昨日から今日にかけて激動の一日を過ごし、メンタル面でかなりのダメージを受けてしまっているオレとは対照的に、普段と変わらず呑気に軽口を叩いて来る兄ちゃんのその態度が、やけに癪に障ってしまって。
考えてみたら超自分勝手な理屈だよね。
オレの方こそ、こういう所はちゃんと治さないと、周りの人に嫌われちゃうや。
反省しつつ、オレはそこから足早に歩き出した。
今日はこのまま真っ直ぐ、アパートへ帰ろう。
そして、居るかどうかは分からないけれど、吾妻さんの部屋を訪ねてみよう。
話したい事がたくさんある。
彼に、伝えたい事が。
オレも知ってしまったから。
とても悲しくて、惨い真実を。
同じ秘密を抱える事になった彼に、どうしても、この胸の内を聞いてもらわずにはいられなかった。
部屋の前に立ち、呼び鈴を鳴らそうと指を伸ばした瞬間だった。
ガチャ、と音がしたかと思うと、目の前のドアがゆっくりと開いていく。
「あ……」
「やっぱりそうだ」
「私から告白しておいてゴメンね?でも、比企君といるとリラックスし過ぎて、男として見られない事に気付いちゃったんだよね」
彼女に振られた時に、言われた言葉。
『そんでいつの間にやら別れちまってて、その後さっぱり浮いた話を聞かないからさー。一体これからどうするつもりなんだろうと思って』
「自分が新婚ラブラブ期だからって、そのノリを周りに押し付けるのはやめろよな」
オレはちょっと強い口調でたしなめた。
「家族にならまだしも、他の人にもそういう態度を取ってたら、嫌われちゃうからね」
『あ、わ、わりぃ』
基本平和主義者で誰かを怒らせたり傷付けたりするのが苦手な兄ちゃんは、慌てて謝罪した。
「…とにかく、ちょっと調べたい事とかあるから、明日に限らず、しばらくは実家に顔出せないと思う」
『……そっか』
「そういう訳だから、皆によろしく言っといて」
『分かった。それじゃ、また今度な』
「うん」
『ホントゴメンな?たすく』
最後にもう一度詫びを入れてから、兄ちゃんは電話を切った。
……ちょっと言い過ぎちゃったかな。
ケータイをポッケに戻しつつ考える。
今のは八つ当たりも入っちゃってたんだよな。
昨日から今日にかけて激動の一日を過ごし、メンタル面でかなりのダメージを受けてしまっているオレとは対照的に、普段と変わらず呑気に軽口を叩いて来る兄ちゃんのその態度が、やけに癪に障ってしまって。
考えてみたら超自分勝手な理屈だよね。
オレの方こそ、こういう所はちゃんと治さないと、周りの人に嫌われちゃうや。
反省しつつ、オレはそこから足早に歩き出した。
今日はこのまま真っ直ぐ、アパートへ帰ろう。
そして、居るかどうかは分からないけれど、吾妻さんの部屋を訪ねてみよう。
話したい事がたくさんある。
彼に、伝えたい事が。
オレも知ってしまったから。
とても悲しくて、惨い真実を。
同じ秘密を抱える事になった彼に、どうしても、この胸の内を聞いてもらわずにはいられなかった。
部屋の前に立ち、呼び鈴を鳴らそうと指を伸ばした瞬間だった。
ガチャ、と音がしたかと思うと、目の前のドアがゆっくりと開いていく。
「あ……」
「やっぱりそうだ」