わたしと彼の選挙活動~イケメンでちょっとS~
2人の間に校庭から聞こえてくる運動部の掛け声が通り過ぎる。
少しだけ間があり、声を発したのは「んー」という神林くんの唸るような声だった。
「どれもあまり自覚はないけど…、ひとつだけは違うって言えるかな。みんなに優しいってのは間違い。
俺、長澤さんにだけは優しくないよ」
「えっ?」
神林くんの思いもよらない言葉に聞き間違いかと思い顔を上げて、
――えっ…
心臓が止まりそうだった。
だって唇に柔らかい感触があって、神林くんにキスされてるのだと気づいてしまったから。
唇の柔らかさを確かめるような優しくも吸いつくようなキスに、声が漏れそうになってしまう。
最後にちゅっと音を立てゆっくり離れていく唇。
「気を引きたくて強引に唇を奪うとか、優しくないよな?」
少しハニかんで笑った神林くん。
わたし、今、神林くんと…
唇に残る感触に、たった今の行為に、
恥ずかしさが込み上げてきてとっさに顔を背けてしまう。