秘密のブライド
可笑しくて、と笑うミツの笑顔は言葉では表しがたいほどに美しい。
その美術品のような微笑みにすっかり毒気を抜かれた晴信は、仕方ないなと困ったように笑った。
そして細めた瞳でミツを見つめる。
「お前がそんなこと言っていいのか?相続争いになったらどうする。万が一ということがあるかもしれないんだぞ」
もとより既に晴信はミツとの間に太郎と次郎という二人の男児を儲けている。
晴信は子が健康体であるならば、己とミツとの間に出来た子に家督を継がせるつもりでいた。
もちろん晴信が現役である今、まだまだ先のことではあるのだが。