秘密のブライド
「…何故この縁談を受けた?何か考えがあるのか?」
疑うべき相手でないことはわかっている。
しかし仮にも妻に寝首をかかれるようなことがあってはならない。
今川が武田を潰そうと、なんてことも今の世では到底否定できぬことだった。
晴信はこの武田を背負っていく男である。
危険なことを自ら招くことは避けたい。
そんな意味合いを込めて晴信は真剣な瞳を彼女に向けた。
そこに緩やかさや情けは一切ない。
言葉を向けられた彼女は驚いたように目を見開いた後、考えるように口許に手を添えた。