秘密のブライド
それはどこか諦めにも似た言葉。
言葉だけを聞いたなら、現状を悲観したものに聞こえるだろう。
しかしその声には諦めも悲しみも見出だせない。
どんな表情でその台詞を言っているのかと顔を見つめれば、その唇は変わらず微笑んだまま。
晴信を見つめる瞳には真っ直ぐな意志が浮かんでいる。
「でも、それは貴方様も一緒でしょう?私のような見ず知らずの公家の娘が後妻にくるなんて」
思っていなかったでしょう?と彼女は楽しげに微笑んだ。
言われてハッとする。
確かに自分はどこかで漠然と武家の娘と婚姻を結ぶものだと思っていた。