秘密のブライド
「あぁ。親父を隠居させたからには今度は俺が結果を出さなくてはな」
困ったもんだよ、と晴信は頭を掻きながら手元に広げていた地図をミツの見やすいように広げ直す。
それはとても異様な光景のように思えた。
信濃侵攻はいわば軍事ごと。
それを例え正室であろうと女に意見させるなどあるべきことではない。
女が表立って政に口を出すべきでないことはこの世の常である。
しかしそんな世間をよそに、二人にとってはこの光景こそ当たり前のあるべき姿で。
どう思う?と言いながら意見を求めるのは晴信がそれほどまでにミツを信頼している証なのだ。