れぷりか









「‥‥……



好き‥‥だったよ‥」

私を抱きしめるヒロの手が震えてる。




「‥好きだった。」

もう一度はっきりと、ヒロが言った。



「わたし‥私も…大好き、だったよ‥」

涙がとまらない。

本当は、まだ過去になんてしたくない…


「今まで、本当にごめん。
いっぱい傷つけて、ごめん。」


「…私、こそ…気持ちおしつけて
きっと、ずっと重荷だったでしょ?」


「違う!そんな…俺はいつも、咲希に助けられてた。なのに、何も返せなかった…

だけど、勝手だけど…ちゃんと、大切だったんだ。」


何か、言わなきゃ…
ちゃんと、答えなきゃ…

できるなら
このままずっと、この温もりに包まれていたい…

「嬉しい…そんなふうに、思ってくれてたなら…」
でも、無理だとわかっているから
せめて最後くらい”ごめんね”じゃなくて

「…ありがとう」

忘れたい過去ではなく、せめて
ヒロの中で、ひとつの思い出として…
いつか笑って話せる日がくればいいのに

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