れぷりか




* * * * * *



「咲希ちゃん…?」


勢いよくあけた病室のドアの向こうには、不思議そうに私を見つめる美希がいた。



「美希!」



「ちょと…もうー咲希ちゃん、重いよー」


私は自分が今どんな姿をしているのかも忘れて、美希に抱きついてしまい

美希はそんな私に少し驚きながら、笑って冗談ぽく答えた。



「…ごめんっ……」
美希の声が懐かしくて、嬉しくて…
思わず涙が溢れる。

ヒロは
私達の様子を見守るようにして、ただ静かにその場にたたずんでいた。


「咲希ちゃん、泣かないでー

私こそごめんだよ…だいぶ長い間寝ちゃってたみたいだもんね。」


そうして話す美希の笑顔は
変わらず、あの頃のままで

まるで
今までの事が、全て夢だったのではないかと思わせる。


< 64 / 110 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop