おはなのようせい【短編】
それでも、私は蒔かざるを得なかった。
花を一つ一つブーケの中から抜き出して、蒔いているとき、私は彼を思い出す。
ささくれた私は思い出を実現することで、なんとか心を保っていた。
これは当時の私には必要な事だったように今なら思う。見事に亀裂が入った片想いは破片となって、体を削っていた。
花蒔きは波のような作業だった。
やっと角が取れて、海ガラスのように変わることがきっとできたのだ。
最期にしよう。そう思った。
気付いた今でないと、きっと儀式は義務となる。
早速、植物図鑑を本棚から取り出した。
私は一枚一枚に描かれた花を吟味する。
最期に似合う花はなんだろうか。
自分が鳥籠の鍵を開けれることに素直に喜びながら、また一枚ページを捲った。