緊急指令:恋せよ乙女っ!
「ルイスく、ん…」
彼女は戸惑いながらも彼の名を呼ぶ。そうしないといけない気がした。
「……、僕ね、今まで周りの望むままに生きてきたんだ」
彼女を腕の中に閉じこめながら、唐突にぽつりと呟く。
「周りの求めるルイス=トムリアムをずっとやってきた。それが僕にとって当たり前だったから。勿論、馴染むためっていうのもあるけど」
ちえは言葉を発さず、黙って彼の話を聞いている。
「…周りが望んでいることが僕の望みでもあったんだ。だから自分が欲しいものとかなんてなかった」
でも、と言葉を区切り、スッと身体を離したルイスはちえのまんまるい瞳を見据え薄く笑んだ。
「初めて、周りを全部無視して欲しいものが出来た」
ドクン、それに反応するように彼女の胸は脈打つ。
「ちえ、君だ」
「…っ」
からかわれてなんて、いなかったんだ。あまりにもいつも通りだったから嘘か本当か分からなかった。
(……反らせない)
今の彼から瞳を反らすことなんて、出来ない。