塾の先生
また私が窓に顔を向けたところで

「消しゴムありがと」

そう言って彼は

私の机に消しゴムを返した。

「消しゴム無いなら数学の時間持ってていいよ。」

「大坂、消しゴム使わねえの?」

使うというかノートすら書いてない。

「うん。」

即答で答えた。

「消しゴム無かったら困るだろ。俺の机の端っこに置いとくから使うとき取ってな。」

「おっけーです。」

彼は消しゴムを自分の机の

端っこに置くと黒板に目を戻した。

私は窓の外の景色に目を戻した。

「消しゴム、ありがと」

数学の授業が終わったあと彼は

そう言って消しゴムを私の筆箱に入れた。

「秀晃ー、掃除いくぞー。」

誰かが彼の名前を呼んで掃除に誘っていた。

「今行くー。」

佐野 秀晃。

彼は私の机から離れると教室から出ていった。
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