不器用なあいつ
怒っているのかな。
強い目線があたしをいたたまれなくしてくる。
目がそらせなくて苦しい。
熱い。熱くてたまらない。
頬が、指先が、髪の毛先まで全部。
「くっそ、やっぱり気の利いたことも言えなかった」
今ほど俺の不器用さを呪ったことはない、なんてどれだけ小声でもこの距離じゃ聞こえてるよ。
拓海の切なそうで、もどかしそうで、そして目を離せないほど赤い顔。
それを見ているとじわじわ落ち着いてきた。
「あたしは、嫌い」
「そ、か……」
あいつの瞳に影が落ちていくのを見つめていた。
壁から手を離そうとする彼の腕を引き止める。
「だけど、あの刺繍のハンカチはあんたにあげたい」