今日も貴方のために私は総てを忘れた
薄く暗い部屋の中。
話し声が聞こえてきた。
何を喋っているのだろう。
男性が数人。
寝ている女性を挟んで会話をしているのは明らか。
女性は状況を把握すると静かに起き上がった。
一人の男性が女性の体を支えると「大丈夫ですか?」と声をかける。

「ここは…?」

女性は体を支えてくれた男性に問いかける。
男性は悲しそうに一瞬だけ顔を歪めると直ぐに表情を戻した。

「無事ならよかった。待っていてください。今、あの方を呼んで参ります。」

男性は女性の質問を聞いてないふりをし、後ろに控えていた男性にまかせると退室した。

「小白殿、何も覚えてらっしゃらないのか?」

女性の見張りを任された男性はさっきの男性が思っていたであろう事を女性に質問をする。

「…」

女性は顔を伏せ思考を巡らせる。

私はなんなのか。

それだけが頭を過る。

しばらくすると男性は何かを諦めるような顔で溜め息をついた。
「もう、いいです。答えはもう、貴女の顔を見てわかりました。後は殿にお任せ致します。」
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