今日も貴方のために私は総てを忘れた
殿?その言葉を聞いたら急に苦しくなった女性…小白は心臓の辺りを掴むように寝着を掴んだ。

「とりあえず、まだ安静にしてください。殿へのご報告は俺が…」

男性が小白に安静の言葉をかけると同時に慌ただしい足音と雄々しくも品のある声が制止の言葉を振り払いながら此方へ近づいているようだった。

「はぁ…」

男性が溜め息を着くと同時に襖が壊れん限りの強い力で開いた。

「小白!無事かっ!」

開かれた襖から現れたのは髪を高く結い上げて一纏めにしていて、顔についている傷の性か、荒々しくも美しい男性と後ろには一言で現せば豪快という言葉が似合う男性、その隣には髪が短く少年とも、青年とも呼べなくもない男性が立っていた。

「殿、小白はまだ目覚めたばかりです!少しはいや、いつも大人しくしていてください!」
少年は顔に似合わず毒をつきながら小白が目覚めたのを喜んでいる様子だった。

「信長殿…大変申し訳難いのですが…」
「どうした。元気が無いではないか。我の訪問に嬉しくて声もでんのか?ん?」

男性の言葉を殿と呼ばれている男性は雪音の横に腰を下ろすと頭を乱暴に撫で回した。

「あの…、」
「本当にどうした?いつもなら…」
「…信長殿、小白は記憶が無いのです。」

やっとの思いで話を切り出せた男性ははぁ…と一息つくと殿と呼ばれている男性はあり得ないとばかりに目を丸くさせた。

「えっ…」

後ろに控えていた男性たちも驚いたとばかりに動揺を見せた。
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