高梨さんの日常
制服に着替えて、ソファに座った。
この時間はいつも手持ち無沙汰だ。
じゃあ、もう少し遅く起きればいいのに、なんて自分でも思うけど。
身についてしまった癖はなかなか変えようがない。
「いくか」
そう呟いた声がリビングに静かに響いた。
カバンを持って、玄関に行く。
少しきたなくなったローファーを履いて、ドアを開ける。
見上げて、目の前に広がった空が灰色で、一旦家に入って玄関先に置いてある、折りたたみ傘をとってまた家を出た。
ガチャリ。
鍵をしめるのにも慣れた。
閉め忘れたとしても、あまり意味はないけれど。
ぐっと伸びをして、歩く。
まっすぐ前を見て。背筋をピンと伸ばして。
そうするだけで清々しい気分になって、学校へ行けば、また北条に会えるんだと思うと、さらに気持ちが弾んだ。