高梨さんの日常
迷惑をかけっぱなしじゃないかな。
少し不安だ。
「…わたしもさ、彼氏にあげたいんだよね」
「そうですか」
お姉さんは、ポツリと呟いた。
「でも、いつも綺麗にできなくてさ、最終的にはツカサにほとんど手伝ってもらってるの。今年こそ、ツカサの力を借りないでやりたいなと思って」
少し恥ずかしそうにうつむく姿がとても可愛かった。
「だから、二人で頑張ろう!」
でもすぐに、顔を上げて、ファイト、と腕をあげた。
「また、メールするね」
「はい、よろしくお願いします!」
「じゃあ、ありがとうございました。」
雨も少し小ぶりになって、びしょ濡れのコートを乾燥機で乾かしてもらって、家に帰ることになった。
北条が出してくれたお菓子は美味しかった。
傘を借りて、お辞儀をして門をくぐる。
北条は送って行くと言ってくれたけど、断った。
夜道を歩きたい気分なんだと言って。
泣いたことがあったからか、それ以上粘ったりはされなかった。
夜道は暗い。
暗いけど、星は見えない。
きっと暗いけど明るいからなんだ。
街灯のせいで。ギラギラとしたネオンのせいで。
星はそこにあるはず、見えるはずなのに。
でも、街灯が全部消えたとして、そこに星がある保障はある?
一生懸命輝いているのに、人間が見もしないから愛想を尽かして光るのをやめてしまうことはない?
星は諦めずにそこにあるんだろうか。
あってくれるんだろうか。