高梨さんの日常


わたしもお姉さんのを口に運ぶ。

うまく丸まっていなくて不恰好なトリュフ。

口に入れると、苦さとともに……しょっぱい??

「しょっぱい…」

あまりの塩辛さに声に出してしまった。

「え!え、ごめん!!どうしよう!また砂糖と塩間違えた!!」

使った調味料のラベルをみて、そう叫ぶ。


…ていうかどうしてお菓子の材料を買うのに塩?


「ツカサがさーちょびっと塩いれると甘さが引き立つって…あー塩買わなきゃよかったー」


甘さが引き立つ…。

「お姉さん、わたしも塩、使っていいですか?」

「え、うん、どうぞ」

さっき作ったものをまた作る。

でも、さっきとは違って少し、塩を混ぜた。

出来上がったものを食べてみる。

「これが愛情……」

「うーん!さっきよりうま!!」

ひょいっと手が伸びてきて、お姉さんは感激してくれた。

甘いだけのものに少しのアクセント。

それだけでこんなにガラリと変わるんだ。


少し、加えただけで。

少し、変えただけで。

ただ、それだけで。


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