高梨さんの日常
「うわあ!!すっごい!!たくさんくもがある!」
隣にいたリンが空を見上げた。
夕焼けで少し赤みがかかっている空に、もくもくと浮かぶたくさんの雲。
「これは、いわし雲っていうんだよ」
優しく教えてくれるお父さん。
「今日、帰ったらいわしでも焼こうか」
ちょっとお茶目なおかあさん。
「くものあじがするかなあ」
まだ夢見がちだったわたし。
「ふふふ!みんなであるくのたのしいね!」
なにより、家族でいるのが好きだったリン。
繋がった影をみて歩くのが好きだった。
リンが空を見上げて。
だからわたしも空を見上げた。
高くて、遠い空をみていれば、
四人、家族が揃っていれば、
どこにだって行ける気がしていた。