高梨さんの日常




いつも一緒にいたはずの妹が、いつの間にか離れてしまっていたこと。

そして、家に引きこもってしまったこと。

躍起になって家から出そうとした両親の必死さが、怖かったこと。

母親のヒステリー。

父親の高圧的な態度と、暴力。

なんとかこらえようと、1人部屋に逃げていたこと。

気持ちを表情に出せなくなったの決定的な出来事。


「無理やりにでも笑っていようと決めて、大声が響くリビングにいたの。そしたら、リンにはそれが気に食わなかったらしくて…」

なんで笑ってんだと叫ばれる声。

それを制止しようとする母親。

今度は母親に向かって一方的に投げられる罵詈雑言。

我慢ができなくなった父親が、殴りつけようと構えると、妹をかばって背中で勢い良くそれを受けた母親。

よろけた先にはテーブルの角があって、そこにぶつかってとめどなく溢れ始めた血。


真っ白になる視界。


目が覚めると病院で、点滴をうたれていたこと。

そこから、意図せずとも、表情が顔にでなくなってしまったこと。


何かに吹っ切れたのか、そんな、辛かっただろうことを淡々と伝えてくれた。

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