高梨さんの日常
「ゴディバかー…それよりさ、」
手作り、なんてどう?
ニッコリ笑いながらそんなことを言ってくるから、もはやいじめじゃないだろうか、なんて。
「ムリムリムリムリ、あの北条に手作りとか恥晒すだけだって」
全力で否定すると、井ノ上さんは、
「えーー?そんなことないのになあ」
なんて、言ってくる。
「彼女からの手作りチョコなんて、誰でもうれしいハズだよ」
そうなのかなあ、なんて考えながら空を見る。
朝の晴天とは打って変わってだんだん雲に覆われて行く様子に、なんだかナイーブになる。
北条はきっと毎年かなりの量のチョコをもらうはずで、私のなんてその中のひとつ。それが手作りだろうと既製品だろうと関係ないんじゃないか。
「まーたなんか考え込んでるでしょ、高梨さん。気にしなくていいのに。高梨さんと北条くんはお似合いのカップルだよ」
励ましてくれる井ノ上さんに、ありがとう、なんて言いながらも気分は上がらない。