高梨さんの日常


最近、北条が呼び出される回数が増えた。

バレンタインだからだろうと思うけど、戻ってくるときの北条が妙ににこやかで、その度気分が下がる。


嫉妬なんて。


醜いその感情の抑え方がよくわからなくて、空を見続けて落ち着かせる。

「そういう感情はさ、北条くんに言えば万事解決だよ」

毎週火曜日、図書カウンターで開かれる相談会と言う名の井ノ上さんとのおしゃべりでそう言われたけど、こんなの重すぎるに決まってる。




「寒いねー」

全校生徒の最終下校時間になって、図書館を閉めて、部活の終わった北条と生徒玄関で落ち合う。

外に出て、はぁーっと白い息を手の中に吐きながら、北条は言った。


首には私があげたマフラーがぬくぬくと巻かれていて、それだけでなんだか嬉しくなる。

「はい」

そう言って差し出された手を握ると、外気の冷たさなんて気にならないくらい胸があったかくなる。

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