高梨さんの日常
だけど。
家に近づくにつれてどんどん重くなって行く気持ちには勝てなくて。
暖まったはずの体もどんどん冷えて行く。
「じゃあね」
ポツポツと会話を交わしながら帰る道が終わって、いつも別れる交差点に着く。
初めは家まで送るよ、と何度も言われていたけど、私がガンとして拒否したから、諦めたのか、この交差点が私たちの別れの場所だ。
「またね」
たったの三文字にいろんな感情を込めると、北条もニコリとわらって
「うん、また明日」
そう言った。
その言葉に毎回救われている自分に、北条の存在のデカさに気付く。
いつか。
気持ちの整理がついたら。
もう少し、大人になれたら。
表情を出すことに抵抗がなくなったら。
話せると思うんだ。
話してみたいと思うんだ。