ウィリアム&マリアシリーズ1『アーヴィング家遺産争奪戦』
「あたしにも母さんにも、身よりは何もなかった。やつらに始末されても、誰も気づいてくれない。死にたくない。だから……、契約書に血判を押したの…」

「むちゃくちゃだ…。莫大な資金力と人脈で、ずっと以前からこの慣習を守ってきたんだろうな」

マリアは無言で涙を拭った。

「でも、あのスナイパーはお前を殺すために、上の兄弟の誰かが雇ったもんなんだろ?だったらお前も対抗してスナイパーなりボディガードなり雇えばいいじゃないか」

「それができれば苦労しないわよ!兄さんたちが、腕のたつスナイパーやボディガードや探偵を買収して、私の味方にならないようにしたのよ!」

なんてこった。

それで、さっきも追い返されていたのか……。

「ねえ、ウィリアム。この際、あなたが一流か二流かなんてどうでもいい。あたしを勝たせて……!」
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