ウィリアム&マリアシリーズ1『アーヴィング家遺産争奪戦』
ガンッ。

ドアを蹴飛ばす音。

「ガキが。出直してきやがれ!」

男の怒鳴り声。

バシャン。

水をぶちまける音。

「何しやがんだ、てめェっ…」

「二度と来ないわよ!!人でなし!一生恨んでやる!」

なんだ?

ウィリアムは声のするほうに視線を向けた。

2、3軒先の家のドアがバンッと閉められた。

その家の前に、ふんわりしたピンクの花柄ワンピースを着て豊かな金髪を腰まで伸ばした、可憐な少女がいた。

彼女は手にした空き缶を、グシャグシャに握りつぶし、地面に叩きつける。

「ああ~腹立つ!あのクソジジイ、ただじゃ済まさないから!」

通行人は、関わりたくないらしく、知らん顔で通りすぎていく。

騒がしい子だな。

見た目と正反対だ。

ウィリアムは、ついつい少女を観察してしまった。

探偵の職業病ってやつだ。

つと、少女と目があった。

しまった。

と思ったがもう遅い。

少女は大股でずんずんウィリアムのほうへ近づいてきた。
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