ｳｨﾘｱﾑ＆ﾏﾘｱｼﾘｰｽﾞ１『ｱｰｳﾞｨﾝｸﾞ家遺産争奪戦』

「なんか文句ある!?あるなら言ってみなさいよ!!」

少女はｳｨﾘｱﾑに詰め寄って、目の前でじだんだを踏みながらわめいた。

少女の蒼い瞳はらんらんと光り、紅潮した頬には金髪がまとわりついている。

よく見たら服も靴も、あまり綺麗とは言いがたい。

「文句って……。あのな、公衆の面前だぞ。騒ぐなら公園で思いっきり騒げ。な？」

ｳｨﾘｱﾑは困惑して頭をかきながら、仕方なく応じた。

すると少女は急に動きを止め、俯いた。

「なによっ…、何も分かってないくせに……」

爪が食い込みそうなほど強く握った拳を震わせて、少女はつぶやいた。

ｶﾞﾗｽ玉のような瞳から、大粒の涙が零れた。

な、なんで急に泣き出すんだ!?

俺は何もキツいことは言ってないぞ。

うーん。

なにやら事情がありそうだな。

ｳｨﾘｱﾑはため息をつくと、少女の肩に手を置き、かがみこんで目線をそろえた。

「ｳﾁ、この近所なんだよ。探偵事務所を開いてる。とりあえずそこで話を聞くから、泣くなって」

少女はずっと俯いたままだったが、探偵事務所、のくだりで彼女はｷｯと顔を上げた。

「探偵!?今、探偵って言ったわね!!」

少女はｳｨﾘｱﾑのｼｬﾂを掴み、ｶﾞﾝｶﾞﾝ揺さぶる。