君に恋していいですか?
3月の最終週、1週間程有給を取った。


今までこんな風に有給を取ったことがない。


ゆっくりしたかったのと、色々やらなければならないことがあったから、止むを得ずといったところか。


まず、引越しを業者に委託。


荷物が無いからかあっという間に終わる。


自宅に戻る前にきっちりとカタを付けたくて、中崎や田村に会う。


田村に至っては「気にすることないのに〜」と、カラカラ笑っていた。
気にするさ。出来るだけ泣かせたり嫌な思いをさせたくないからな。

「お前は良くても、俺や嫁さんは嫌なんだよ。」


と、ハッキリ言うと真面目な顔になってから笑う。


「たまたま好きになった人が結婚しちゃっただけだもん。
悪気もないしね。ただ2人が別れるならあたしもチャンスを狙うってだけ。
神山さん、真面目に考えすぎよ。」


それならいいんだが。


問題は中崎。

彼女は真面目に考えてやらなきゃならない。


「この前話したのが全てだから…」


なんてあっさりかわされた。


なんなんだよ、女って。


こっちは真剣に考えてたってのに。


「部長。」


声がして、隠れていたのか三枝が現れた。


「大丈夫ですよ、あいつら。神山さんが真面目なのはわかりますけど…放っておけば男が出来て忘れますって。」


そんなもんなのか?
イマドキの若者はわからん。


「すまん。年寄りにはわからん。」


苦笑いすると三枝は声を上げて笑った。

「ホント、真面目なんですね。そう言う所、見習いたいです。あ、今度遊びに行きますね。奥さんに会わせてくださいよ。」


やんちゃな部分も少しあった三枝。
奴は伸びる。
間違いなく。

そんな三枝が、中崎をずっと見ていた事を知るのはもっとずっと先の話。


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