君に恋していいですか?
一週間、と約束したはずなのに、5月最終週になっても毎朝俺のデスクの上にはランチボックスが置かれている。




毎日必ずひとことメモが書き添えられていて。


密かに俺はそれを捨てずに集めていた。



何て書いてあるんだろう。



それが楽しみになっていた。


申し訳ない気がして何度かもういいよ、と断ったのに、池永は自分のを作るついでだからいいんだという。



食費だってかさむから、と言うと
「たいしたもの入れてませんよ」と笑う。


元来の甘え癖が出てズルズルとそのままできてしまった。




さて、今日のひとことは何かな。




ボックスの入っている手提げの保温袋を開けると、いつものメモ紙。


裏返すとそこには何やら記号が書いてあった。



(ん?なんだこれ?)



よく見るとメールアドレスだ。
電話番号も書いてある。


下に小さく【おかずリクエストあったらメールください。】と書かれていた。



池永のメールアドレスか。



そういやぁ、うちの課の者の携帯番号は知ってるけど、アドレスは知らなかったな。



そう思い、弁当を食べながら登録してとりあえずメールを送る。



【いつも弁当有難う。美味かったよ。神山】


味気ないかな、と思いながらも送信する。




しばらくして返信が来る。



【本当ですか?よかった、お口に合わなかったらと心配でした。池永】



口に合うどころか、毎回美味すぎてあっという間に平らげてしまうのに。



いい嫁さんになるんだろうな。


以前、冷凍食品ばかり詰めた弁当だろうなんて思っていた事を心の中で反省しなきゃだ。


いつもいつも手の込んだ手作り弁当。




ほんのりあったかい、まるで人柄が滲むような優しい弁当に毎日癒されてるな、俺。



< 19 / 110 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop