君に恋していいですか?
アドレスを交換してから。



毎日のメモと同じように、ひとことだけのメールが届くようになった。



今日のスーツは似合ってましたね、
とか髪型はやっぱり以前のが似合ってます、とか。
たまに仕事の反省なんかも来たりして、毎日の終わりに楽しみが増えた。


独り暮らしのマンションに華やぐ事など何もないのに、
彼女からのメールを見るだけで、
弁当に忍ばせたメモを読み返すだけで、
優しい気持ちになれるのだ。



「なんか祐太朗、優しい雰囲気になったね。」



用事がないのにたまにやって来る(今日もアポなし訪問だ。)咲が俺を見てそう言う。



「そうか?変わんねぇぞ。」

「えー、違うよぉ。彼女出来た?この前の詩織ちゃん?」



詩織ちゃん???



誰だ、それ。


「詩織って?」


訪ねた俺に「またまたぁ〜、わざとらし〜い!」何て言いながら、咲は俺をつつく。




「ほら。この前会ったじゃん!詩織ちゃん。あー、えーと、祐太朗の部下?会社の!」




そこまで言われてようやくピンと来た。



「池永か!そんな名前だったっけ?」




覚える気がないからか、なかなか合致しなかった。



「あたし絶対あの子は祐太朗に気があると思うんだぁ!」



自信満々にいう咲を小突く。
そんな事を勝手に言うんじゃない。



「お前お得意の思い込みだな。」

「いや、オンナの感よ!」



自信満々過ぎてため息しかでない。
なんだか疲れる相手だ。




そうこうしているうちに、メール着信音がする。

今日は何て書いてあるんだろう?




スマホをタップしてメールを開く。



【相談したら聞いてくれますか?】




そんな一行。


返事は決まってる。



【勿論だ。】


そう返信した。



< 20 / 110 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop