君に恋していいですか?
その日、ちゃんと仕事をしたのかどうか、記憶がない。




あまりの衝撃に耐え兼ねて咲に連絡した。



夜、うちにやって来た咲は深いため息を吐き、俺に言い切った。



「そんな萎れるくらいなら、好きだの一言を何で言わないの!
この腑抜け兄貴‼︎バカ兄貴‼︎」


「いや、だから、好きとか嫌いとかよくわかんねぇんだよ!
この気持ちがなんなのか、未だにわからねぇからモヤモヤしてウダウダしてんじゃねぇか!」




鳩が豆鉄砲食らったような顔。


ポカンとした咲は、本気で驚いていた。





「祐太朗、あんた過去カノに好きって感情持ったことなかったの⁉︎」



「…よくわからん。付き合ってくれって言うから、付き合ってた。」



呆れたとばかりに咲は続ける。


「じゃあ好きだからセックスするんじゃないの?」


「したくなるからするだけだ。感情とかはなかったな。」




そう言い切ると、深いため息をまたひとつ吐き、咲は俯く。


「祐太朗、感情欠落し過ぎ…恋愛下手すぎ…。」




…そんなの、俺が一番よく知ってるよ。




「だから、イメージと違うとか言われちゃうんだね。
祐太朗は臆病者なんだよ。
失うのが怖いから、先に進まない。
でもさ…失うかもしれなくても、心の奥にある気持ちにちゃんと目を向けなきゃ、いつまで経ってもこのままだよ?」




咲が言う言葉はごもっともで。



何も言えない俺は項垂れるしかなかった。

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