君に恋していいですか?
そんなこんなで終業の時間になる。



週末残業するやつなんてほとんどいない。



類に漏れず俺も残業はしない。
荷物をまとめ、帰宅準備をする。


と。



「課長」



不意に背後から声をかけられ振り向いた。



「…池永。」



久々に仕事以外で話したかも。



「あのっ、こ、今晩、よかったら」
「いいよ。」


真っ赤になってワタワタとしながら話す彼女を見て、素直に可愛いな、と思う。



「へ?」

「食事?それとも飲みに行く?俺はどっちでもいいよ。」




そう言うと、俺はこれでもか!ってくらいの笑顔を作る。




「あの…」


「あ、俺の勘違い?」


「勘違いじゃないです!その通りです!」



物凄い勢い。



見ていて飽きないな。
で、この心の中でフワフワしててホンワカしたもの。




これが恋なのか?



「じゃ、行こう。何がいい?俺は池永が作る弁当みたいな和食がいいなぁ。」



スラスラと言葉が出てくる。

なんだろう、今までにない感じ。



自然と顔がニコニコになるし、胸はあったかい。


会社を出て、さて、行き先は?と問うと。



「よかったら、あの、わたし、作ります。課長のお好きなもの何でも仰ってください!」


しどろもどろの彼女をいきなり自宅に連れて行ってもいいもんだろうか。



「…それは俺のうち?池永のうち?」



問いかけに暫く悩んだ彼女は小さな声で『わたしのうちでいいですか?』と、答えた。



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