君に恋していいですか?
びっくりしたことがある。




池永の住むマンションが、俺のマンションから徒歩5分のところにあったのだ。



池永自身もかなり驚いていた。



「じゃあさ、俺一旦うちに帰って着替えてからここに来るよ。15分もかからないと思うし。」


「はい、分かりました。夕食は和食だったらなんでもいいんですか?」


「あぁ。好き嫌いないから。和食なら何でも。」

そう答えてから、一旦別れる。



早足で自宅に戻り、この前咲が買ってくれたシャツに着替えジーパンを履く。



財布、携帯、鍵。


それだけを手にしてすぐにうちを出る。



楽しみだ。


晩御飯は何だろう。


買い物に行かなかったけど、大丈夫かな。



ワクワクしながら、再び来た道を帰る。


マンションのエントランスで池永の部屋番号を押しインターホンを鳴らす。


小さな声がした。


『はい。』


「神山です。」


『どうぞ。』


自動ドアが開き、さぁどうぞとばかりに俺を誘う。


しかし、勢いだけでここまできたものの。
いいんだろうか。

長い共用廊下を歩きながら考える。


付き合ってるわけでもないのに1人暮らしの女性のうちに上がるなんて。

辿り着いた池永の部屋の前。

玄関先で悩んでいたら、いきなりドアが勢いよく開いた。


「うわっ!」


「きゃあっ!」



危うくドアで頭を打つとこだった。
反射神経が良くてセーフ。


「課長!大丈夫ですか⁉︎すみませんっ、いらっしゃると思わなくてっ」

慌てて謝る彼女を制して言葉を止める。


「大丈夫だから。考え込んで立ち止まってたんだから、俺も悪いよ。ごめん。」


そこまで言って、ふと気付く。



「どこか行くんだった?俺が来ちゃマズイなら帰るけど…」


「あ、いや、違います!なかなか来られないからどうしたのかって…」


なかなかチャイムが鳴らないことに

…不安になったとか?

違うか。



「じゃあ、お邪魔してもいい?」



にっこり笑うと彼女も嬉しそうに笑って「はい!」と答えた。


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