君に恋していいですか?
「噂の彼女からですか?」



伊島の言葉に曖昧に笑う。



「プレゼントを返そうと思って連絡しておいたんだ。好意がないのにプレゼントなんか貰ったら、その気になるだろ。
いつまでも諦めの悪い態度になりそうだから、返すつもりなんだ。」



…気持ちがあれば嬉しいプレゼントなのに。



「返されるとは思ってないんでしょうね。」


なんとも言えない微妙な表情で伊島が言った。


確かに…。
朝渡したプレゼントを夜返されるなんて誰が思うんだろう。

返すなら直ぐに返すだろうし。



「でもそれで課長はいいんですか?」



顔を上げた俺に、伊島は意地悪そうに口角をあげる。



「どういう意味だ?」


「そのまんまですよ。彼女は話からしてかなり鈍感だ。ならばハッキリと好きだと言わない限り気付いて貰える可能性は無いってわけですよ。

だったら一発勝負でしょ。


男ならやっぱり好きだとか愛してるとかハッキリ言えなきゃダメっすよ。」




…それが出来るなら、今こんなに悩んでないよ。

項垂れる俺の背中をバシンと叩き、カラカラと笑う伊島はいい男だな。




「当たって砕けろって言うじゃないですか。残念会開きますから、会うなら告ってきてください!」



…気持ちが震えた。



伝えたい。



君に好きだと、伝えたい。



そう思ったから。



【わたし、応援してますから!】



そう言っていた彼女が、自分がその相手になってるなんて思いもしないだろうから。


【失恋ですか?】


…いや、恋に落ちてたんだ。

気付かぬうちに。


君に。


柔らかな雰囲気のあったかい君に。


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