君に恋していいですか?
仕事が1時間ほど残業になり、先に帰った詩織からメッセージが来ていた。



【食事の支度しておきます。帰る時に連絡ください。 詩織】




合鍵を渡しておいて正解だった。



俺よりも先に咲が行かなきゃいいけど。


そう思って詩織に連絡するよりも先に、やかましいあいつに電話をかけた。



『はいは〜い!何だ〜?スケベ兄貴〜!』


半笑いで電話に出た咲。


殴りたくなる奴。ムカつく。


「うるさい。商品持って行ったか?」

『まだー、あ、もしかして詩織ちゃんに自分から渡したいとか言う〜?』


問われた通りだが、何か?


「うるさいって。まだなら俺のとこに持ってこいよ。まだ会社だからさ。」


『はいはい、あたし使うと高くつくわよ。今から行くから、支払いしてよね。
安くしといたから、おつりはあたしに手間賃でちょうだい。』


…本気で殴りたくなってきた。


「咲、長生きしたいならふざけない方がいいぞ。で、いくらなんだ?」


ふふん、と笑う声がする。


『3万。ホントはもう少しするんだけどさ。あと、あたしから詩織ちゃんにプレゼントで幾つか入れてある。それは無料だからね。』



ムカつく奴でふざけた妹だけど、こういう所は気が利くよな。


「サンキュ。詩織にも言っとくよ。出来るだけ急いで来てくれ。」

はいはい、と返事があってから通話が切れた。




多分30分くらいだな。



その間に詩織に連絡する。



「もしもし?」



周りを見回して誰も居ない事を確認してから話し始める。


聞かれたら何を噂されるかわからない。



『はい。』


「詩織?今どこだ?」


『祐太朗さんのマンションに向かってるところです。あ、何かありました?晩御飯のリクエストとか?』


ふふっと笑う声がして。

その声を聞いたら詩織の笑顔が見えるようだった。



「いや、そうじゃなくて。ちゃんと有給申請したか?」


『はい、しましたよ。でも急にどうしたんですか?』


…言うべきなのか、言わない方がいいのか。どうしようか。


「ん、ちょっとね。休んだ方がいいんじゃないかって思うから。今日は飲まないから、つまみとか必要ないから。

あと1時間ほどしたら帰るよ。」


『気をつけてくださいね、待ってます。』


…待ってろよ。


心を決めて君に伝えるよ。


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