君に恋していいですか?
9月の出来事。
夢はいつか醒める。
…そう誰かが言っていた。
自分も夢をみれば、いつか現実に押しやられ目が覚める様に夢が終わると信じていた。
でも。
醒めて欲しくない。
詩織との甘い時間。
彼女から与えられる喜び、悲しみ、喜怒哀楽全て。
腕の中で色付く彼女を見ているだけで、幸せな気持ちになれる。
嬌声をあげ、鳴く詩織を誰にも渡すものか、と思う。
これほどの幸せを感じたことが無かった。これが本当の愛なのだと詩織に教えられた。
「は?異動ですか?」
ある日、部長に呼ばれ会議室でのこと。
淡々と話す部長の口からそんな言葉が零れてきた。
「神山を支店の方に是非と言われたよ。
そちらに部長として行ってもらう。
何か問題があるなら今言ってくれ。」
昇進。
嬉しくないはずがない。
ただ…詩織はどう思うだろうか。
「考えさせてもらう時間はありますか?」
「1週間だ。よろしく頼むよ。」
肩をポンと叩かれ、部長は会議室を後にする。
どうしようか。
詩織だって働いてるんだ。
俺の都合に合わせるなんて無理がある。
支店だってかなり距離がある…遠恋なんて言うような距離じゃない。
…独り悩んでも仕方ない。
スマホを取り出し詩織にメッセージを送る。
【九州支店への転勤の話が出た。】
それだけ送ると自分のデスクに戻るため会議室を出た。
バタバタと足音がし、曲がり角を勢い良く曲がってきた誰かとぶつかった。
「わっ‼︎」
「きゃあっ‼︎」
反射的に倒れそうになる相手を庇うように抱きしめた。
ハッとして離れると、その相手は…
「詩織」
「祐太朗さんっ」
血相を変え息を切らしている。
「どうした?」
「嫌です、わたし、嫌、祐太朗さんと離れるなんて嫌‼︎」
取り乱した詩織は、社内だというのに抱きつくように胸に縋り付く。
「詩織」
「連れてってくださいっ、離れるなんて嫌…」
ポロポロと涙を零し。
周りの驚いた顔が、何よりも俺には居心地悪かった。
詩織とのことは知られても構わない。
ただ。
…恥ずかしいんだ。
「詩織、まだ行くと決めたわけじゃないんだ。それよりさ。みんな見てるぞ?」
胸に縋り付いた状態で半泣きの詩織は、周りの事など目に入っていなかったようで。
パッと離れ居住まいを正した。
「あ、あのっ、ごめんなさいっ!」
いや、いいんだ。隠してるのも潮時だと思ってたし。
「一週間猶予を貰った。昇進なんだけどな…異動が支店だし…お前と離れるなんて俺も考えられなかったから。」
そう伝えて背中をポンと叩く。
「ま、皆に知られてもいいだろ。」
そんなことより、昇進の話が頭の中で一歩も進まなかった。
…そう誰かが言っていた。
自分も夢をみれば、いつか現実に押しやられ目が覚める様に夢が終わると信じていた。
でも。
醒めて欲しくない。
詩織との甘い時間。
彼女から与えられる喜び、悲しみ、喜怒哀楽全て。
腕の中で色付く彼女を見ているだけで、幸せな気持ちになれる。
嬌声をあげ、鳴く詩織を誰にも渡すものか、と思う。
これほどの幸せを感じたことが無かった。これが本当の愛なのだと詩織に教えられた。
「は?異動ですか?」
ある日、部長に呼ばれ会議室でのこと。
淡々と話す部長の口からそんな言葉が零れてきた。
「神山を支店の方に是非と言われたよ。
そちらに部長として行ってもらう。
何か問題があるなら今言ってくれ。」
昇進。
嬉しくないはずがない。
ただ…詩織はどう思うだろうか。
「考えさせてもらう時間はありますか?」
「1週間だ。よろしく頼むよ。」
肩をポンと叩かれ、部長は会議室を後にする。
どうしようか。
詩織だって働いてるんだ。
俺の都合に合わせるなんて無理がある。
支店だってかなり距離がある…遠恋なんて言うような距離じゃない。
…独り悩んでも仕方ない。
スマホを取り出し詩織にメッセージを送る。
【九州支店への転勤の話が出た。】
それだけ送ると自分のデスクに戻るため会議室を出た。
バタバタと足音がし、曲がり角を勢い良く曲がってきた誰かとぶつかった。
「わっ‼︎」
「きゃあっ‼︎」
反射的に倒れそうになる相手を庇うように抱きしめた。
ハッとして離れると、その相手は…
「詩織」
「祐太朗さんっ」
血相を変え息を切らしている。
「どうした?」
「嫌です、わたし、嫌、祐太朗さんと離れるなんて嫌‼︎」
取り乱した詩織は、社内だというのに抱きつくように胸に縋り付く。
「詩織」
「連れてってくださいっ、離れるなんて嫌…」
ポロポロと涙を零し。
周りの驚いた顔が、何よりも俺には居心地悪かった。
詩織とのことは知られても構わない。
ただ。
…恥ずかしいんだ。
「詩織、まだ行くと決めたわけじゃないんだ。それよりさ。みんな見てるぞ?」
胸に縋り付いた状態で半泣きの詩織は、周りの事など目に入っていなかったようで。
パッと離れ居住まいを正した。
「あ、あのっ、ごめんなさいっ!」
いや、いいんだ。隠してるのも潮時だと思ってたし。
「一週間猶予を貰った。昇進なんだけどな…異動が支店だし…お前と離れるなんて俺も考えられなかったから。」
そう伝えて背中をポンと叩く。
「ま、皆に知られてもいいだろ。」
そんなことより、昇進の話が頭の中で一歩も進まなかった。