君に恋していいですか?
わたし、人の名前を覚えるのが苦手で。



「課長」


って呼んでいたから名字が何なのか、全く覚えてなくて。



それにさり気なく気付いていた課長から、「覚えとけ」って言われた。



その日からわたしの中で『神山 祐太朗』っていう名前は特別になった。


密かに『祐太朗さん』なんて呼んだりしてて。


彼氏が居たのに、そこにはもう気持ちがなくて。

別れたらいいのになかなか切り出せなかったわたしの背中を課長が後押ししてくれた。



GWの初日。


仕事だっていう彼のマンションにアポなしで訪ねたら。



可愛らしい女の子が居た。



「誰?」


って奥から出てきた彼は悪びれもせずわたしに言ったの。



「お前はつまんねぇんだよね。
付き合ってんのにヤらせてくんねぇし。キスは下手だしさぁ。
いい加減別れようと思ってたとこだし。丁度いいじゃん。」



可愛らしい彼女の肩を抱き、ワザとわたしに見せびらかすようにキスをした2人。



「今までありがとう。さよなら。わたしも素敵な彼氏が出来たから。」



最期だけ、嘘をついた。


強がりだけど。



負けたくなかったから。


泣くもんか。



分かってたことじゃない。浮気してるの隠そうともしなかったから。



男なんてみんな同じ。



…同じ?


課長も?

神山課長も浮気してるのかしら。




…してないわね。

課長、あぁ見えて優しい人だから。



< 63 / 110 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop