君に恋していいですか?
夜9時過ぎ。


課長からメールがきた。


今から出られるか?って。



もちろん!


…でも。あんなに不機嫌だった課長。


もしかしたら、いらないって突き返されるのかも。


緊張して待っていたらインターホンがなった。



すぐにエントランスに降りると。


複雑そうな顔をした課長がいて。

いきなりわたしの手を掴んで歩き出した。
どこに行くのか問うと、「俺のうち。」とか言われて。



え⁉︎なんでなの⁉︎
…ってわたし、パニックだった。



不機嫌になるなんて思いもしなかったから、ホントは嬉しさ半分、不安半分だったわたし。


前にわたしのうちで食事をした時に、課長のマンションがわたしのうちから徒歩5分の所にある高級マンションだって知って驚いたっけ。


あっという間に課長のうちに着いて。

座っててなんて言われたけれど、どうしたらいいのかわからなくて。



ぼんやりと外を眺めてた。


綺麗な夜景。



夏の暑さなんてわからない、別世界。



課長から、やっぱりプレゼントのことを問われた。


…余計なことをしたかもしれない。
だって、課長は自分で買うつもりだったわけだし…もしかしたらこのメーカーの腕時計じゃなかったのかもしれない。



そう思ったら、止まらなかった。
言わなくてもいいようなことを、ペラペラとまくし立てて言ってしまった。


期待しちゃうから。


プライベートを知れば知るほど、もしかしたらわたしを愛してくれてるのかも、なんて…。



プレゼントを返してもらって帰ろう。



そう思ったら、腕を引かれて名前を呼ばれた。


「詩織」


低くて少し掠れた、課長の声。


「好きになってはいけない人って誰だ?」


そんなの決まってる。



大好きな人。


愛してる人。


わたしの…愛おしい祐太朗さん。




「俺?」


って聞かれて恥ずかしくて胸に飛び込んだ。


15歳も年上で。
大人な彼からしたら、わたしなんてまだまだ子供。


以前、菊池さんと話した時に
「課長の彼女ってすっごい美人で出来る女!って感じの人なんだろうねぇ。」
なんて話になって。

だいたい想像がつく。


わたしみたいなぽっちゃりした、何の取り柄もないような女じゃなくて。


スレンダーで素敵な、仕事をバリバリこなすような女性。


なのに、何故?


課長がわたしを抱きしめてくれるの?

「マジかよ」

って言いながら痛いほど強く抱きしめてくれるのは何故?


「どうしたらいいか解らないくらい君のことを想ってる」

って囁かれて。


好き、って言われて。



嬉しすぎてわぁわぁ泣いてしまった。

嘘みたい。


わたしの勝手な夢?


祐太朗さんがわたしを?好き?

ううん、嘘じゃない。
広くて逞しい胸の中にわたしを閉じ込めるように抱きしめてくれてる。


課長の声が響くの。


詩織が好きだ…って。
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