君に恋していいですか?
でも。

そこから何も進展しなかった。
わたしがお子様だからかな。
色気がないからかな。
愛されたいって身体が求めてるのに、言えない。

課長はキスすらしてくれなくて。



毎週末、課長のうちで食事をして他愛のない会話をして送られてお終い。


やっぱりわたしのこと、好きじゃないのかしら。



そんな不安に押しつぶされそうだったある日。


以前会ったことがある課長の妹さんの咲さんが、週末のわたしたちの間に入り込んできた。


わたし、咲さんが好きで。


以前、菊池さんと話してた「課長の彼女」理想図そのままな女性だったから。


彼女に学ぼうと思ってた。

そしたら、「下着は男を誘う」って言われて。


咲さんは下着メーカーのデザイナーさんだったから、そういう意味では本当に師と仰ぎたくなる人で。


奮発して買って、それをきっかけに、なんて考えてたら課長が支払うとか言い出して。



またまた喧嘩になっちゃった。

結局、課長に払ってもらう事になって。

わたしはその下着が届いたらわたしの全てを課長にあげる約束をした。



その日は意外と呆気なくやって来て。


あれよあれよと言う間に下着姿を見せて。


笑うことなく真剣な眼差しでわたしを見るから、恥ずかしくて。


「わたし、太ってるからみっともないでしょ。」


そういうのが精一杯で。


ベッドに腰掛けていた課長はわたしの身体にふわりと触れて

「俺は詩織が好きなんだよ。
スタイルなんて人それぞれでいいじゃないか。
詩織は詩織のままで。」


優しくそう言ってくれた。



怖くはなかった。

初めてだったけど、課長が優しくて。
全てを曝け出して見せても笑うことなく、愛してくれた。


自信がなかったわたしを包んでくれた。


愛される事の意味を知った。


もっと愛されたい。
必要とされたい。


わたし、割と貪欲なんだなって知った。


愛される度、もっと、もっとってなって。

「詩織は若いから…俺はおっさんだから」


って課長は笑う。
でもちゃんと応えてくれる彼が好きで好きで堪らなかった。

離れるなんて考えられなかった。




まさか。



九州に転勤するなんて。
< 68 / 110 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop