君に恋していいですか?
離れたくなくてわがままをたくさん言った。
大泣きするわたしを、優しく抱きしめてくれる課長。
そのまま身体ごと攫われて、なし崩しにセックスをしても愛されてるんだなってわかるだけで。

課長も離れたくないんだなぁって思ってた。


辞令を受けて九州へ行くと決めて。


わたしに「ここで待っててくれ」なんて言うけれど、不安に押しつぶされそうで、「連れていって」としか言えなかった。

辞表を書いて。
勝手に提出した。

人事部長は事情を知っているみたいで。

「神山に相談したのか?」

と、問われた。

それに応えることなくわたしは会議室前に向かう。


そこで見た彼の目は、やっぱりいつもと同じで。


デスクに戻ったわたしは押しつぶされそうな不安でいっぱいで。

菊池さんから何度も「大丈夫?」って聞かれるほど、青ざめていた気がする。



ツカツカと歩み寄ってきた課長がいきなりわたしの腕を掴み引き上げる。


何なの⁉︎


そう思ったわたしに彼は言い切った。

「本社に戻ってきたら、結婚しよう」

…って。


だから、待ってろって。

広報のみんなに頭を下げてわたしを支えてやってくれって。



嬉しすぎて。

でも離れていくのが淋しくて。


「浮気しないで」


っていうのが精一杯だった。



それからは同棲をした。


毎日一緒。

目覚める時も、寝る時も。
自宅に居るときはひたすらくっついてた。

何度も抱かれた。


祐太朗さんの身体が、わたしの身体が、溶けてくっついちゃうんじゃないかってくらい。


でも。


いなくなっちゃった。


約束の指輪を残して。


毎日電話で話すの。


愛してるよ。

詩織に会いたい。

触れたい。


そう言いながら、お互い我慢した。


最初のうちは帰れないって言われてたから、我慢した。


会社では皆がわたしを包んでくれた。


うちに帰って淋しくなると、咲さんが励ましてくれた。


あんなエロおやじな兄貴を好きになってくれてありがとうって。

笑いながら言うの。


以前の祐太朗さんとは違うって。


感情のない、ただ、惰性で女性と付き合ってた頃の祐太朗さんじゃなくなった、って。



嬉しい。


わたしが祐太朗さんを変えた?


わたしが祐太朗さんに変えられた様に。


愛してる。


早く帰ってきて。



そう願っていたら、年末年始一緒にいるから、って言われた。


嬉しくて。



やっと触れられる。
彼に。


願っていたその日がやってきた。
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