君に恋していいですか?
メガネ。

インテリ。


それだけでピンときた。


「山本さん?」

「あ、わかった?」


咲はでへへ、と笑い男の腕に腕を絡ませた。

「ちょ!やめろって、人前だろ!」


照れているのか、彼はその腕を解こうと必死になる。


「いいじゃん!会社じゃないんだし。あ、何?それともあたしと腕を組むのは嫌だとか?」


「そっ、それは違う!違うけど!」



…よくわからんが、上手くいったのか。


多少微妙な距離感はあるものの、照れているだけにも見える。


「兄の神山祐太朗です、すみませんね、咲に振り回されてるんでしょう?」


右手を差し出すと、一瞬の間を開けて握り返された。


「山本琢磨です。初めまして。あの、かみや…咲さんと、その」

「いいですよ、何と無くわかりますから。取り敢えず行きましょうか。」



目立つ場所にいつまでも居るのは得策ではない。


「詩織を連れてきてくれたのは感謝するが、お前は悪目立ちしすぎる。少し自重しろ。」



そのうち、その彼氏(?)に諭されるだろうがな。


「はぁーい。じゃ、行こっか!」


2人のことは置いといて。

詩織の手を握り、顔を見る。

久しぶりに会う彼女の全てが愛おしい。

「祐太朗さん、疲れてないですか?大丈夫?」


小首を傾げると、長い髪が揺れた。


「大丈夫だよ。
それより、おせち料理作ってるんだろ?楽しみだな。
詩織は料理が上手いから、一緒になったら俺は太るかもだなぁ。」


でも、そんな幸せもいいな。
子供がいて、詩織がいる。


頑張る意味があるってもんだ。


「祐太朗さんは太らないですよ
、代謝がいいんでしょうね。食べる量だって凄いのに全然脂肪がついてなくて、筋肉だし。」


「詩織ちゃん、さり気なく兄貴のこと自慢してるよ。しかもさり気なくエロ発言だよ。」


…咲に突っ込まれてあたふたする詩織。

久々の雰囲気。

「でも、詩織さんから聞いていた咲のお兄さんってもっとこう優男ってイメージでしたけど。」


…今、何て言った?


…詩織さん?


「あ、すみません、優男っていうか、フワフワしてる人ってイメージがあって…」

「琢磨、黙る。」



俺の眉間のしわにいち早く気づいた咲が、彼氏(?)の口を止める。


なんでお前が詩織を名前で呼ぶんだ。


それきり、口を閉ざした俺に恐れた山本は話しかけてこなくなり。


咲は不機嫌の理由が分かっているから何も言わないまま。


詩織はひたすら俺にくっついていた。


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