君に恋していいですか?
どれくらい時間が経ったのだろう。



ぐっすり寝ている詩織の長い髪を撫でながら、ふと思う。


早く帰らなければ、詩織の心が壊れてしまうんじゃないだろうか。


「詩織…」


何度抱いても飽きることなく、俺の全てが彼女を求める。


「…ん…」


身動ぎして目を覚ます。


「ごめん、起こしたか。」

「…ん、祐太朗さん、起きてたの?お腹すいた?」

ゆるゆると身体を起こし、俺を見る。

その身体は以前のような柔らかな印象が消え、ほっそりとした今現在もてはやされている女性のようだった。


「詩織、明日どこかに出かけよう。クリスマスプレゼント、買えなかったから明日何か贈るよ。」


そう言う俺に向き直り、ゆっくりと口角を上げた。


「何もいらないわ。
…今、ここにあなたがいるから。
わたしが欲しいのは祐太朗さんよ。だから、いいの。」

それじゃ俺の気が済まない。
何か形になるものじゃないと。


「俺が贈りたいんだよ。詩織の支えになるような何かを。」


一歩も引かない俺に、詩織はため息をついた。


「わたしたち、毎回こうやって喧嘩するのよね。
…なんでもいいの?わたしへのプレゼントって。」


詩織が折れた。
珍しいな。彼女はこういう話のとき、大概譲らないんだけれど…。


「あぁ。何でもいいよ。何がいい?」


そう言った俺に詩織は躊躇った後、小さな声で呟いた。


「…赤ちゃん…」


…と。



< 73 / 110 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop