君に恋していいですか?
「詩織…」


「ね、今はまだ無理だってわかってるからわたしが祐太朗さんから貰いたいものなんて無いのよ。

…その時がきたら、世界で一番大切なものを貰うから。

だからわたし頑張るって決めたの。
今は食事だって普通に食べれてるわ、大丈夫よ?」


ベッドから降りて振り返った彼女は今まで見せたことの無いような…強い、母親のような表情をしていた。


「わかった。その時がきたら遠慮しないから、覚悟しとけよ。」


照れ臭そうに笑う詩織。

やっぱり女は強い。


「とりあえず、何か食べたいな。たくさん運動したから腹減ってるよ。」

そう言うと、詩織は下着を身につけながらうん、と返事をした。


「シャワー浴びてきたら?その間に支度するから。」

髪を束ね振り向いた詩織は俺を見て笑う。

「やだ、何か着るか隠すかしてください!」


素っ裸でいつまでもいるもんだから背中を押された。






「美味かった!久々に詩織の飯が食えて幸せだなぁ。」


かなり遅い時間の夕食になったものの、満足いくまで食べた。



…本当に太りそうだ。



後片付けを一緒にして、片付け終わってからふたりでソファに座る。


「どこに行きたい?」

「ん?」

「明日だよ。」


しばらく考えてから詩織がぽつりと呟いた。

「咲さん達も一緒に出掛けたい。」

「咲?なんでだ?」


コテン、と頭を俺にもたれかかるように預けるとゆっくりと話し始めた。


「わたしが…その…祐太朗さんがいなくて不安定だった時。

咲さん、毎日様子見にきてくれてたんです。
自分のことだってあるのに、毎日毎日。
山本さんはそんな咲さんの様子を見てて、彼氏ができたんだと勘違いしちゃって…」


…なるほど。


俺の名前を言ったりするだろうし、足繁く俺のマンションに通えば、そりゃ勘違いされるよな。


「咲さん、山本さんに気持ちを言ってなくて。だからここに乗り込んできた時の山本さん、もう手が付けられないくらい怒ってて。
そんな2人にわたし…たくさん助けられたから。
何か返したいんです。

…だめですか?」


そんな風におねだりされたら、嫌だなんて言えないだろう?


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