君に恋していいですか?
翌朝。


近所迷惑甚だしく咲がやって来た。


詩織がメールしていたらしい。



「ぎゃー!祐太朗っ、ちょっと、何か着なさいよ!バカ兄貴‼︎」


自宅でパンツ一丁で何故文句言われなきゃならないんだ。


「祐太朗さん、スウェットそこにありますから。」


ソファにかけられていた自分のスウェットをはくと、上半身は裸のままなのに文句を言わない咲。


「お前、自分の兄貴の裸見たくらいでギャーギャー騒ぐなよ。見慣れてる癖に。そんなんで彼氏の裸見れるのかよ。」



と。


至極普通の事を言ったつもりだったのに。


隣で詩織が固まって。


向かい側で咲がアワアワしていた。


「な…なんだよ、俺変なこと言ったか?」


「み…見慣れてるの?」

「変態兄貴‼︎」


なんなんだよ。おかしいか?


「咲さん、見慣れてるの?」

詩織に尋ねられて咲は「あー、まぁ。」と曖昧に返事をしたものの。詩織は落ち込んだような顔をしていた。


ブラコンな咲。


とにかく俺からなかなか離れたがらず、俺に彼女が出来ると邪魔をし、ひたすら追い払うことを繰り返していた。
初めてなんだ、追い払わないのは。
しかも、こんなに仲良くしてるなんて。


それだけ、咲が詩織を好きなんだろう。


「なんだよ、詩織。そんな顔をするなよ。」

「だって…」


しょんぼりとした彼女にバカが追い打ちをかけた。


「詩織ちゃん、そんな兄妹間の事で落ち込んでたら、兄貴の元カノみんなに落ち込まないといけなくなるわよ。
地の底まで潜るわよ、数多いんだから。」



…余計な事を。


「ですよね…祐太朗さんはやっぱりたくさんの女性とお付き合いしてきたんでしょうし…わたし、気にしすぎなんでしょうか…ね?」

寂しそうに笑う詩織を見ていて堪らなくなって。


思わず引き寄せ口付けた。

「ん…」


甘い吐息が漏れて、咲がいるのについ深く口付けてしまっていた。


「そんな顔をするなよ。
過去はどうにもできないんだ。俺のも、詩織のも。な?」


腕の中でうん、と頷き小さく笑った。


「あのー、あたしは無視ですかー?」


…忘れてた。


「ていうか、咲。
お前の彼氏は?一緒じゃないのか?」

そう尋ねたら。

「あー、一緒じゃないね。なんでだろね。」


なんてトボけやがった。




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