君に恋していいですか?
そもそも、こんな歳のやつを合コンに誘う若者がよくわからない。




話だって合わないだろうし、そもそも俺は無愛想だ。


そんなつもりはなくても、目つきのせいか怒って見えるらしいし。




そんなオッさんを誘ってもいい事なんかないだろうに。



ついでに言うなら面倒だし。




「課長、GW中お暇なんですか?」




不意に話しかけられて何のことかわからず答えられなかった。




「わたしもなんにも予定がないんですよ、同じですね。」




柔らかな表情で話しかけてきたのは池永だった。




「…あ、あぁ、そうか。伊島の話を聞いてたのか。」




何で知ってるんだろう。





…なんてトボけた事考えてたよ。




「池永は彼氏と出掛けたりしないのか?」




パソコンと睨めっこしたまま問いかける。



と、少しの間を置いて淋しそうな声で答えが返ってきた。




「彼が仕事だっていうので。



…本当は違うと思うんですけどね。
まぁ、そんなこんなでつまらない連休なんです。」




…彼氏居たのか。




お世辞のつもりだったんだが。



トボけた池永に彼氏がいるのに、なんで俺には彼女が出来ないんだろうなぁ…。



…ってなんか自虐的。そして池永に失礼すぎるな。




「何処かいいとこがあれば行くんだけどな。何処に行ってもカップルだらけだから、意気消沈なんだよ。」



言い訳のように言って苦笑い。




コトリと音がして、視線をパソコンから音のした方に向ける。




湯気の上がるマグカップに注がれたそれは、甘い甘いカフェオレ。



甘いのが好きな俺の好みの飲み物、知ってるのか。

不思議な感覚に捉えられて。


視線を今度は池永に向ける。




淋しそうな笑顔で俺を見ていた。



「カフェオレお好きでしたよね、どうぞ。」



ドキン、とする淋しげな笑顔が焼き付いて離れなかった。





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