君に恋していいですか?
それから4人で鍋を囲み、他愛のない話をした。


琢磨は見た目とは違い、気さくな性格で。
詩織曰く、俺の性格に似ているのだそうだ。


「咲さん、祐太朗さんのことが大好きなんですよね。」

そう言った。


兄妹だからなぁ。


そう呟いたけれど。
複雑な心境だった。

娘を嫁にやる父親の心境ってこんな感じなのかな。




「祐太朗さんはわたしのもの。」


それは2人が帰った後の寝室で。

一緒に風呂に入りあったまって上がってきた後のこと。



そう言うなり、詩織は俺の膝の上に向き合った状態で跨って座ってくる。


「当たり前だろ。他に誰がいるんだ?」

「咲さん。」


間髪入れずに答えが返ってきた。

「咲さんのこと考えないで。わたしのことだけ見て。」


初めて聞く詩織のヤキモチ。

嫉妬。


なんて…甘い言葉。


「見てるよ。お前だけだから。」


背中を撫でるとくすぐったそうに笑う。


「ここに、山本さんが乗り込んできた時のこと、話してなかったね。」

「そういやぁそうだな。」


詩織がぎゅうっと抱きついてきて。

声が直に伝わる。


「凄かったんですよ、ドア壊されちゃうかと思って鍵を開けたら入ってきていきなり「愛してる、咲!」だもの。わたし放ったらかしで、目の前でドラマ見てるみたいだった。」

…愛してる、咲。

他の男のところになんか行くな。

お前を愛せるのは俺しかいないだろ。


だったっけ?


散々咲が惚気たから覚えちまった。

…似てるか?俺、そんな事言うか?


「なんかもう、羨ましかった。
手の届く所に愛する人がいるって幸せなことなんだなって実感したもの。」


そりゃそうだ。
俺もずっとそう思ってる。


「詩織、俺ずっと考えてたことがあるんだ。」


そう言うと彼女の身体を抱えベッドに横たえる。


「あとちょっと頑張って帰ってきて。その時、詩織と…子供が待ってる家に帰るってのはどうなんだろうなぁってな。」


目を見開く詩織。


そう。


お前が欲しがったもの。


「でもさ、辛い時期側に居てやれない。そんなのダメだ。
だから考えて行動には出てないんだよね。
ここに…俺と詩織の子供が出来たら、幸せだとは思うんだけどね。」


下っ腹あたりをゆるゆると撫でると、詩織は身をよじった。


「もう少しだけ二人きりがいい。
離れ離れだから…二人きりの時間が欲しいな。」


そう答えた彼女をねじ伏せるように、まるで自分のものだと主張するかのように。

欲するがままに自分の思いをぶつけた。




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