君に恋していいですか?
一年最後の日。


朝早くから詩織はお節料理の仕上げをしている。


本当にこうして側で見ていると、彼女は料理の天才なんじゃないんだろうかと思ってしまう程だ。


「味見させて」

「だぁめ!」


もう何度このやり取りをしただろうか。
我慢の効かない子供か、俺。


夜遅くまで俺に組み敷かれ鳴いていた女だと言うのに。


キッチンに居ると立場が逆転してしまう。


「咲さんと山本さんも来るんだから、沢山いるんです!食べちゃダメ!」



はいはい。

すごすごとキッチンから離れ、寝室へ向かう。


昨日出かけた時にこっそり買っておいた、詩織へのプレゼントを隠しておいたクローゼットから取り出す。


喜んでくれるといいんだけど。



手に持ち、そおっと詩織に近づく。


「詩織」


振り向いた彼女はまたつまみ食いに来たと思ったのか、ムッとした顔をしていた。


「だぁめ!」

「違うよ。詩織にプレゼント。」


そう言ってふわりと腕を回し。



「祐太朗さん…」

「クリスマスプレゼント。遅くなってごめん。」


詩織の胸元で輝くのは。


彼女の誕生石でもあるダイヤモンドが輝くネックレス。



「こんな…わたし…」


「物で縛るつもりはないんだけどさ。ごめん、貰ってくれないか。

…愛してるよ、詩織。」


そう耳元で囁くと、詩織はこぼれ落ちそうな涙を溜めた瞳で俺を見た。


「なんだか似たことをするんですよね、わたしたち。」


そう笑って。


キッチンに隠してあった箱を取り出し、俺に差し出した。


「祐太朗さんが、これを見る度…わたしのことを思い出して、わたしのことしか考えられないようにしたくて。」


開けてみるとそこには。



黒い革紐に幾つかの天然石が織り込まれたブレスレット。


腕時計と一緒にはめてたら、それはもう詩織の気持ちが痛いくらい伝わってくる。



「わたし…祐太朗さんが本社に帰ってきた時に、少しでも役に立つように仕事頑張ります。

隣に立っても恥ずかしくないような女性になるように…だから…」



そう言うと。


少し背伸びをして俺の唇に口付けてきた。



「絶対に浮気しないでね?」



するかよ。


俺にはお前がいるのに…。




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