君に恋していいですか?
参拝を済ませうちに戻る。


黙り込んで歩く俺たちの間には言葉はないけれど、繋いだ手が気持ちや心を伝えていた。


「詩織。」

「はい?」


少しだけ力がこもる、その手のひらに。
分かってるだろうけど、ちゃんと伝える為に。


「これから、沢山困難があると思う。

俺が帰ってくるまでに嫌な事も寂しい事も、俺を疑う様な事も。

でも、これだけは信じろ。


俺はお前を裏切らない。

俺はお前をキライになったりしない。
お前以外の女を愛さない。

必ずお前のところに帰ってくるから。

何があっても俺を信じていてくれ。」



歩きながらそう伝える。


小さく「はい」と頷く彼女にありがとうと答えた。


そうして過ぎて行く束の間の二人きりの時間。


たった1週間じゃ足りない。

離れ離れになるその日が来るのが怖かった。

俺の方が不安だった。


若い彼女が俺なんかより他の男を選んだらどうしよう、とか。


そんな弱虫な気持ちをひたすら隠すために愛を口にする。


なんて女々しい男なんだ、俺。


そんな弱虫な男を優しい笑顔で支えてくれている詩織。


尻に敷くことなんかしなくたって、彼女は俺を大きな愛で包んでくれていて。



母の様なそんな大きな心の持ち主だ、と俺は思ってる。



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