君に恋していいですか?
避妊しない。



それは、彼女が妊娠するかもしれないということ。


責任があるから、今まではキチンとしてきた。

だけど。


何にも阻まれる事無く詩織と繋がって。



それを彼女が拒否しないということが、こんなにも嬉しいことだなんて思いもしなかった。


「籍入れよう。

結婚式は後でやるとして、とりあえず詩織を嫁さんにしたい。」


裸のままムードもへったくれもないプロポーズになってしまって。

詩織が小さく笑った。


「祐太朗さん、9月にわたしに何て言ったか覚えてますか?
…待ってろって言ったんですよ?

言い出しっぺが約束破るんですか?」


…確かに、そう言ったさ。

あの時は我慢できると思ったし、頑張れると思ってたんた。



「わたしが嫌だってあれだけ言ったのに。

…もう、勝手なんだから。」



胸をポカリと叩かれて、彼女のあの時の辛さを今になって痛感する。


「ごめん、わがままで。」


そう謝ると、詩織は仕方ないなぁ、と呟きため息をついた。


「それより、いつまで居れるんだ?」


問いかけに小さな声で答えた。


「明後日まで。」

今日が金曜日。


丸2日しかないのか…。


「有給取ればよかったんだけど…あ、伊島課長と菊池さんも明日来ます。一足先にわたしだけ来たの。祐太朗さんのところに行くって話をしたら、伊島課長が自分も行きたいって言って。」


ふふふ、と思い出し笑いをする詩織。


「なんだ?」

「祐太朗さん、伊島くんに好かれてますね?」


…一時期、お前のことを相談したりしてたからな。

奴も色々あるんだろう。


「課長としての祐太朗さんは、みんなに怖がられてるのに好かれてて。不思議だったわ。」

クルリと背中を向ける彼女を背中からギュッと抱きしめる。
脚を絡ませ合い、これでもかというほどに密着する。


「でも祐太朗さんが皆に好かれる理由は分かるんです。
厳しいけどちゃんと相手の事を考えてる。
皆それを知ってるから貴方に安心してついていけるんです。」

フワフワの長い髪がくすぐったい。


「お前は?」

問いかけた俺の言葉に少しの沈黙の後。



「わたしもついていきます。

…女として。妻として…一生。」


こんなに嬉しい言葉は無い。

不覚にも泣きそうになってしまった。


「幸せにする。離れないでくれ。一生、俺の側で笑っていてくれ。」


頷いた彼女の首筋に、キスの雨を降らせた。



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